記憶喪失
一
柿の実が色づいていた。はじまりは、それだった。
政宗の居城の広大な敷地の片隅には、小十郎が主のためにと世話をする小ぢんまりとした畑がある。そしてその畑の脇には、果実を実らせる樹木が様々植えられている。
枇杷、梅、夏には桃。栗に梨。冬に柚子。
そして柿。
季節は秋を迎え、山では木々が紅葉し、幾つかある柿の木は枝いっぱいに果実を実らせていたが、どれも僅かばかり青さが残り収穫するにはまだ早い。政宗と、政宗に会うため奥州を訪れていた幸村とは、城の外れでの手合わせの戻り道、柿の実を見て足を止めた。
柿はお好きかと幸村が訊いた。
腕組みの手を小袖の袖口に入れ、政宗は木を見上げて頷いた。
あと少しで食えるようになる、楽しみだ。そんなことを話しながら二人は並んで枝を眺め、そこに、ひとつだけ熟した実があることに気がついた。
見つけたのは幸村だった。あれを、と指さしたのは高い枝。手は勿論、幸村が槍を伸ばしたところで届かない高さ。
周囲を見回し、使えそうな道具を探すが何もない。収穫の時期には実を穫るための、竹の先を割り開いた道具が用意されているのだが今年はまだ見あたらない。
幸村の滞在はあと数日。その間には他の実も熟れる。今日のところは諦めるか、それとも道具を作るかと提案した政宗に、幸村は否と短く否定した。
そして、木登りは得意だ、自分が登って取って来る、と胸を叩いてみせたのだった。
「それで見事に落っこちた、と」
「……おう」
脚を崩して座る政宗は、低く言って、彷徨わせた視線を下へと落とした。
向い合いって胡座をかく佐助は、呆れ返って溜息を吐く。
畑近くに建つ、休憩や収穫物の加工場として使われている小さな建物だ。
二人の間には幸村が布団に眠っている。
蘇芳色の小袖と同系色の袴。
手合わせのあいだ袖を括っていた襷と鉢巻は、横たえる時に邪魔に思えて政宗が解いた。髪紐も解いて、今は長い後ろ髪を布団の上に散らしている。
「真田の旦那、かっこ悪」
ぽつりと佐助が呟いた。
政宗は左の眉を上げる。
「ま、得意だってのは嘘じゃなかったぜ」
二槍を政宗に預け、幸村は、思わず感心するほどの身軽さで柿の木へと登ってみせた。枝の又や僅かな節にも足をかけ、瞬く間に上へ。そこまでは良かったのだ。
「ああ。旦那はね、昔から上手いよ、木登りとかそういうの。忍の子顔負けって言われてたくらいで」
けれど色づいた実はごく細い枝の先にあり、幸村は不安定な体勢でそれへと手を伸ばした。指が届いたと思った矢先に枝を踏み外し、地面にまともに落下した。政宗が走り込もうとしたが咄嗟のこと、手の中には幸村の槍があり、急いで放り出したが間に合わなかった。
そのまま意識を手放した。
声をかけても揺すっても目を覚まさず、政宗は幸村を手近な建物へと運び込んだ。部下を使って薬師と、城下に滞在していた佐助を呼んだ。薬師はひとまず脈と外傷のみを診て、今は別の建物に控えさせてある。
「けど、柿の木には登るなって言ってあったんだけどな。ったく、言うこと聞かねえんだから」
「Ha, 乳母みてえな口振りだなァ?」
「そりゃもうお世話歴長いもんで。あいくに乳は出ないし、赤ん坊の頃は知らないけどね」
それでも佐助が真田の家に仕え始めた頃には既に、幸村は稀なほどのすばしこさを見せる子供だった。
覚え始めたばかりの槍を片手にひょいひょいと跳ね回り、走り回り、時には捕まえようとした忍の腕をするりと器用にかわしてみせた。高い場所に登るのが好きで、木に登るのも好きで、枝が少なく難しい木でも予想を超える身軽さで登ってみせては家人の肝を冷やしていた。
武士にするには勿体ない。勿論それは冗談だが、僅かばかりの偽りのない惜しみを込めて、真田に仕える忍たちの間でそう話に出されるほどだった。
けれど幸村は忍の子ではない。武家の子だ。
忍の子ならば負傷を覚悟した修行を課せられる事もあるが、幸村の木登りは修行ではなく遊びで、万一の事があってはお家の大事だ。
もし落ちたら怪我をする、下手をすれば命を落とす、危険だからやめてくれと言ったところで、しかし素直に聞く気性でもない。結局、目を盗んで登られるよりはと護衛がついて好きにさせていたが、滑りやすい木にだけは登らぬよう言い聞かせてあった。
柿の木は、その登ってはいけない木の一つだった。
言い聞かせて、樹皮に触れさせ、幼い幸村にも感触で納得できたのだろう。誰の目がなくとも、禁じられた木に登ることだけはしなかった。
それを。
「頭、変な具合に打ってないといいんだけどね」
この年で今更足を滑らせた。
信玄との過激な殴り合いや、その末の高所からの落下。慣れているはずの幸村だが、余程打ち所が悪かったらしい。目を覚ましたら昔を持ち出してからかってやろうと考えながら、佐助は幸村の顔を覗き込む。
「一応頭は庇ってたぜ。……あァ、そうだ」
政宗は脇に置いてあった柿の実を手に持った。
無言でそれを佐助へと放る。
受け止めた佐助は、ようやく熟れたばかりの若い固い果実と政宗の顔とを見比べた。
「え、何。まさか俺様に剥けってこと?」
「そうじゃねえ。気ぃ失っても離さなかったから持ってきた。思い出しただけだ」
「うわ真田の旦那食い意地きたねえ……って、そうじゃないか、健気?」
「あ?」
柿は放物線を描いて政宗へと投げ返される。
「食べれば? アンタに食べさせたかったって事でしょ」
言われて、政宗は手の上の柿を見た。
――政宗殿は、柿はお好きか?
幸村に問われて、頷いた。それだけだ。柿は、好きだ。
馬鹿が。
政宗は指の腹で、つるりと滑らかな果皮を撫でる。
「……こいつの目が覚めたらな」
呟いて目を上げれば、雀が軽い羽音を立てて縁側に降りた。二、三歩板の上を跳ねたかと思うと、すぐに屋根の方へと羽ばたいて消える。
幸村が気を失ってから一刻近くが経つ。
何となしに気になって、政宗は幸村の口の前へと手を翳した。ふわりと穏やかな呼吸が触れて、すぐに膝へと手を戻す。片足を引き寄せて立て、少しして胡座に戻す。時折思い出したように、手の中で柿の実を回す。
落ち着かない様子を視界の隅に見ていた佐助は、忍装束の懐へと手を入れた。
小さな布の包みを取り出せば、動きに気付いた政宗が佐助の手元へと目を向ける。布の中には大小様々、形も様々の紙包みが収まっていて、全て真田の忍達で作った薬だ。数は十ほど。それで大抵の事態には対処できる。
「気付け。上手くすれば目、覚ますかもしれねえし」
「薬か?」
「いや、香」
取り出したのは、飴玉ほどの大きさの紙包み。指先で弾いて封を切る。
「焚いてみるから外、出ててくれる? ちょいと臭うし染みるから、……ん?」
ふいに語尾を濁した佐助が、ぱちんとひとつ瞬きした。
幸村を見る。
佐助の視線を追った政宗は、寝返りを打った幸村が身動ぐのを見た。寝覚めの直前に似た様子。不明瞭な声が苦しげに小さく呻く。
「……真田の旦那?」
呼べば、応えるように幸村がゆっくりと目を開けた。
目が合って、さすけ、と小さく、どこか怪訝そうな響きで応えた。
二人分の安堵の吐息が狭い部屋の中に漂った。
「うわ良かった。心配させんなよ旦那あ」
「心配? 何が、――ッ!?」
まだ状況が飲み込めていない幸村は、起き上がろうとして顔を蹙めて動きを止めた。中途半端に布団に起きた姿勢で挫け、手をつく。呆然と目を瞠る。
「……体が痛い」
呟きに、政宗は呆れた吐息を落とした。
「なら大人しく寝てやがれ、この馬鹿が」
「覚えてない? 旦那、柿の木から落ちたんだってさ」
「柿……?」
ぼんやりと呟いた幸村は、次の瞬間、勢い良く反対側を振り向いた。政宗と視線がぶつかる。幸村の目がこれ以上ないという程に見開かれる。
政宗は眉根を寄せた。
その目には見覚えがあった。
かつて戦場で対峙した時だ。政宗に炎を移す、激しい敵意と闘志とを湛えた目。
けれど、今更、今ここで、向けられるはずのない目だ。
幸村は後ろ手をつき、腰を浮かせて、敷物の上を僅かばかり後退る。
驚愕を乗せて口にした。
「独眼竜……伊達政宗……!?」
え、何それ、と、佐助が小さく呟いた。
政宗を睨み据えたまま、幸村の手が、得物を求めて床を彷徨う。けれどそこに槍はない。室内を油断なく見回した目が、政宗の背後に置かれた二本の朱槍を見つけて歪む。
「あの、真田の旦那?」
「なぜ貴様がここに居る!」
政宗は眉根を寄せる。
「……おい」
「答えよ!」
声を荒げる幸村に、政宗は溜息を吐いた。
「オレがオレの城にいたところで、何の不思議もねえだろうが」
「独眼竜の、城……?」
背後を振り向き、痛みに小さく呻きながらも、幸村は目を剥いて佐助を睨んだ。
「佐助、まさか、お前が」
「あーちょっと待った旦那。わかった、何となくわかった。誤解したのもわかったけどそれ違うからさ。話すから、とりあえず落ち着こう?」
「落ち着けだと!?」
掴みかかろうとした幸村の手を寸前で受け止め、逸らして、佐助は厳しく目を細める。顔を近づけ、まっすぐに幸村の双眸を覗き込んだ。
「だから、落ち着けって。あんたの忍を信じろよ」
一段低くされた声が静かに、それでいて強い語調で言う。
幸村は激しい怒りを宿して佐助を睨み付け、しばらく無言でそうした後に、気まずく目をそらして俯いた。詰めていた息をゆっくりと吐く。
「……悪かった。説明してくれ」
「あいよ、っと」
その主従の様子を面白くない目で眺めていた政宗は、佐助に視線を向けられて一度瞬いた。
「……外すか?」
「そうして。後で分かったこと話しに行く」
「医者は要るか」
「いや。とりあえず話させて」
頷いて、政宗は手の上の柿を懐に入れて立ちあがる。
「二つ隣の間に居る」
「あいよ」
幸村は政宗を見ず、ただ油断なく様子を伺っていることだけは、その硬い横顔から見て取れた。
何かの拍子に記憶を失う。
そんなこともごく稀にあるのだと、政宗も佐助も話に聞いたことはあった。だが目の当たりにしたのは初めてで、他に考えられないと理解しても、やはり俄には受け入れがたい。
「……三年前、か」
呟いて、政宗は小さく舌打ちした。胡座の足を抱え直す。
幸村に現在の状況を話し、また幸村から話を聞いた佐助は、幸村の記憶が三年ほど昔に遡っていることを確認した。
話をするうちに幸村は落ち着いて、実感などは湧かない様子だったが理解は示して、佐助が自分を――ひいては武田を裏切り伊達に渡したのではないかと、一時でも疑った事を頭を下げて佐助へと詫びた。
控えていた薬師に幸村の状態を説明すれば、初老の薬師もそういった症状を見るのは初めてで、対処法に心当たりもないという。弱りましたなと難しい顔をして、佐助と入れ替わりに幸村を診に行った。
「正確には、三年とちょっと? 一番最近の戦は、あんたと初めて会った合戦だってさ」
部屋の柱に背を預け、足を組んで立つ佐助は、何も言わない政宗を見て言葉を足す。
「独眼竜の旦那がうちに攻め込んで、真田の旦那と一騎打ちして、俺様が邪魔して負けかけた時の」
「わかってる」
政宗はうるさそうに片手を振る。
「つうか、テメエが邪魔に入るのはいつもの事だろ」
「そりゃあ俺様のお仕事ですから」
政宗は乱暴に髪を掻き、胡座の膝に頬杖をついた。
口からは溜息ばかりが零れ落ちる。
三年前。
まだ出会ったばかりの頃。
共寝する関係になるなどとは思いもよらず、互いに互いを倒すべき相手と定めた頃。
それが単純な敵愾心に収まらない感情だと政宗が気付いたのは、一年後、再び刃を交えた後の事だった。だがそう気付いたところで、己と相手の立場を思えばどうする事も出来はしない。
政宗はそう考えていた。
幸村はそうではなかった。
行動を起こしたのは、遅れて自覚した幸村だった。
渇いた唇を、政宗はもう一度舐めて湿らせる。
真田幸村。
それを形作る記憶の全てが零れ落ちなかったことは幸いだが、政宗にとっては振り出しに戻ったということだ。
「……kissでもしてみるか?」
呟いた政宗に、佐助が醒めた目を向ける。
「して何がどうなるんだよそんなもん」
「Ha, さすが忍は物を知らねえな」
政宗は小馬鹿にして鼻で嗤う。
「異国じゃ目が覚めねえ呪いも、蛙に姿を変えられる呪いも、死ぬような毒を食っちまっても全部kissで治るんだぜ?」
「あー悪いけど俺様、今冗談に付き合う気分じゃねえんだわ」
政宗の言うキスはつまり接吻のことだ。
幸村に教えられたり、政宗と言葉を交わしたりするうちに、佐助もそれなりに異国の言葉を覚えてしまった。キスは聞く機会の多い単語だけに、覚え間違いはない筈だ。
日の本の民と大きく異なる容姿から、異国の者を鬼と呼ぶ声がある事も知っている。だが、眼の色肌の色髪の色、そんなものがどれほど異なったところで人として何ら変わりはないのだと、それを基準にすれば古なじみのくノ一も、また己自身も、鬼の範疇に入ってしまう佐助は身を持って知っている。
ふいに政宗が深く吐息して舌打った。
あの馬鹿、と短く毒突く。
「どうせなら丸ごと忘れてろよ……」
苦く漏らされる言葉に、佐助は半ば義務的に先を促してやる。
「丸ごと忘れてたら、どうするって?」
「そりゃ、オレの色小姓だとか適当な事吹き込んで元に戻るまで楽しむに決まってんだろ」
「あんた、最悪」
佐助は冷えた視線を政宗に向ける。
「状況選んで物言えっての……ったく」
言うが、佐助にもさほどの緊迫感はない。
自分が誰かもわからなくなったり、子供の頃まで遡ったならともかく、失われたのは僅かに三年分。
現在の情勢や、その間に信玄の下や真田の下に増えた顔は説明すれば飲み込むだろうし、正直さほどの支障はない。
問題があるのは、政宗だ。
その間に唯一大きな変化を見せた、幸村と政宗との関係。
腕組みしたまま柱伝いに佐助はずるずると座り込み、上目遣いに政宗を見た。
「いっそ、してみる?」
「何を」
「さっき言ってたやつ」
「あ?」
頬杖の手から顔を上げて、政宗が目を瞬かせた。
「多分すっげえ抵抗するだろうけど。下手すりゃ血ィ見るかもしれねえし、不本意だけど手伝うよ。俺様が後ろから羽交い締めにしとくから、軽くやってみれば?」
「アンタ、まさか信じたのか? ありゃ異国でガキに聞かせる作り話だ」
「まさか。でも手だてもないし、埒もあかねえし、もういっぺん衝撃与えたら直ったって話聞いたことあるし。どっかから突き落としてみてもいいけど、それでまた変なとこ打って余計悪くなったら困るし。で、突き落とす以外で衝撃受けることっていうと、真田の旦那の場合はさ」
「……色事、か」
まだ物慣れない頃の幸村の狼狽ぶりを思い出して、政宗は短く唸る。
「そ。だから、試してみる価値はあるかもよ?」
そうは言っても、今の幸村は出会ったばかりの真田幸村だ。政宗は今さっき見た、政宗をただ敵視する目、毛を逆立てた獣のような様子を思い出す。
無理やり接吻などすれば、どんな罵声が飛び出すことか。
いや、それはそれでそそるような気もするのだが。
「No. 気が乗らねえ」
「……まあね」
「それで記憶が戻りゃいいがな、戻らなかったらこじれるどころじゃ済まねえだろ。主を押さえ付けて襲わせたなんざ、忍頭といえど首が飛ぶんじゃねえのか」
「いや襲えとまでは言ってねえし! ま、こじれるのは確かだけどさ」
唸る佐助を眺め、政宗はふいに吐息で笑う。
「何」
佐助が視線で抗議すれば、苦笑を浮かべた口元が、いや、と短く否定した。
「考えてみりゃ、意外だと思ってな」
「だから何」
「今の真田は、オレに惚れる前の真田幸村だ。面倒のねえとこまで戻ったってわけだ。テメエにとっては、喜ぶべき事じゃねえかと思ったんだがなァ?」
棘を含んだ言葉の響きに、佐助は天井を仰ぐ。
「あー、そう言われりゃそうねえ。旦那たちの文持っての往復もなくなるし、奥州詣での護衛もなくなるし、甲斐に戻ったら戻ったで延々のろけ聞かされるなーんてこともなくなるし。雑用は減って、妬いた竜の旦那に攻撃されたり、痴話喧嘩のだしに使われることもなくなって。万々歳か」
妬く、との言葉に、政宗が眉間に皺を寄せた。
気付いたけれど気付かないふりで、それ以上からかうこともせずに佐助は黒い天井板を眺める。
幸村の記憶が戻るまでは。
最悪の場合、戻らなければ。
確かに面倒は減り、心配事もなくなる。敵対する男、しかも奥州の主などに深入りしてどうするのだと、気を揉むことはなくなるのだ。
けれど。
「はは、何でかね。そういう気になんねえや」
薄く笑って、跳ねるようにして佐助は柱から背を離す。
上半身を捻って伸びをする。
「とりあえず連れて戻るよ? 今の旦那はここじゃ落ち着かないだろうし」
「ああ。荷物は客の間にある。持って行け」
「はいよ。あと、旦那たちの事は伏せておくから。独眼竜とねんごろでしたなんて俺様の口からは言えねえし。あんたも話合わせろよな」
「誰が言うかよ」
「へいへい、っと。じゃ、旦那が呼んでるから行って来る」
言葉に、政宗は目を丸くした。
幸村がいる部屋の方へと目を向ける。
襖は閉めてある。政宗の耳には呼び声などは聞こえていない。聴力にはそれなりの自信があるが、声はおろか、合図のようなものすら耳にしていない。
風もなく、外は静かで、些細な音も遮るような雑音はないというのに。
「忍の技、ってやつか? どんな仕掛けだ」
聞けば、佐助は楽しげに目を細めた。
その表情だけで答える気はないとわかる。
「内緒」
予想通りにそう言うと、佐助は音もなく廊下へ出た。
その姿を見送り、しばらくの後に、政宗も吐息と共に立ち上がった。
初:2007.10.13/改:2013.06.09
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