浪漫

 吐精感に内股が震え、足先で敷布を掻きながら幸村の髪を掴む。途端、下腹の猛りを扱く幸村の手が止められた。
 何故止めるとの不満を込めて睨み付けた先で、幸村がちらと笑う。政宗に顔を近づけて、浮かべているのは悪戯を思いついた子供のような笑みだ。
「口で言ってくだされ」
「……あ?」
「どうして欲しいか、言っていただけねばわからぬ」
 視線を合わせて、ひと呼吸の後に二人揃って吹き出した。
「テメエ……こんな時に仕返しするか……!?」
「こんな時だからでござろう」
 笑いすぎた政宗は咳き込んでいる。そこまで笑うこともないだろうと思いながら、幸村も可笑しくて仕方がなくて声をひそめて笑う。
『どうして欲しいか言ってみな?』
 前に体を重ねた時、今とは丁度逆の体勢で、絶頂寸前まで追い上げた幸村を放り出して、政宗が放った言葉がそれだ。
『言えよ。どこに、何が欲しい?』
 しかし幸村は恥じるでなく、ただそれまでの行為で赤く染まった目元を怪訝そうに歪めて、
『伊達殿……それはどうかと』
 しらけた声はいたく政宗を傷つけた。うるせえないいだろうが男の浪漫なんだよcan you understand!? と情けなく言い訳をした政宗は、その後腹いせのように少しばかり乱暴にことを進めて幸村を泣かせたのだけれど。
「ah, ……i see. 確かに笑えるな……」
「そうでござろう?」
 ひとしきり笑って滲んだ涙を拭った政宗は、指先で幸村を手招きする。
 そうして素直に口元に寄せられた幸村の耳に、卑猥な言葉を吹き込んだ。途端、弾かれたように体を離した幸村が、顔全体を赤く染めて口元を押さえる。
「な……なるほど……」
「結構クるだろ?」
「理解した……」
「Okay, 次んときはよろしく頼むぜ?」
 にやにやと笑う政宗に努力致すと力無く返した幸村は、ひとまずは与えられた浪漫に忠実に、政宗の足を抱え上げた。

2005.12.28