冬の夜
濡れ縁に酒と煙草盆を持ち出して、月見酒と洒落込む事にした。
吐く息は煙管の紫煙に絡んで白く、もし雨が降ったなら雪に変わるのではないかと思えるような夜だったが、酒で火照った体を冷ますには具合が良い。兜の前立てを思わせる鋭い三日月を仰ぎ乍ら、闇夜に酒精と煙とをのぼらせた。
いつになく酔いが回り、柱に凭せ掛けた身体は熱く怠く、鈍った頭はぼんやりと重い。全身の血管を、そのなかをどくどくと流れる血流を妙に意識する。喉を灼く酒を尚も流し込み、煙管を銜え、吸い口から煙を吸った。
深く吸い込んだ煙は胸を回り、そこに溜まった言葉を拾って外気に溶ける。
けれど吐き出す先から言葉は溜まり、捨てても捨ててもきりがない。
言葉にできたなら楽になれるのだろうか。それとも、言葉にした端から積もってより一層重く胸で澱むのだろうか。
薄闇の中、燻る火種の赤だけが目に暖かい。冷気に震えて頭をひとつ振った。
吐き出した煙が言の葉を含んで昏く濁る。
くだらない。らしくもない。
淋しい。
会いたい。
2005.12.05